Q.その他有価証券評価差額金がある場合の企業結合の会計処理で、引継ぐ場合とそうでない場合がある理由は?
- okaikeikochira
- 2021年4月17日
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Q1.その他有価証券評価差額金がある場合の企業結合の会計処理で、引継ぐ場合とそうでない場合がある理由は?
Q2.通常の吸収合併でその他有価証券評価差額金を引き継がない理由は?
これらの質問に回答致します。
なお、私見が含まれている点、ご了承ください。
A.その他有価証券評価差額金を始めとした評価・換算差額等がある場合の会計処理について、吸収合併を例に解説致します。
・まずは、取得とされる吸収合併で考えていきましょう。
取得とされる企業結合はパーチェス法により処理しますが、パーチェス法とは,被取得企業から受入れる資産及び負債の取得原価を、対価として交付する現金及び株式等の時価(公正価値)とする方法であり、これは、一般的な資産の取得と同様の考え方に基づいた方法です。
仮に、A社がB会社からその他有価証券だけを購入した場合(一般的な資産の取得取引)には、B社で計上しているその他有価証券評価差額金を引き継ぎませんが、それと同じように、取得とされる企業結合でも引き継ぎません。
・少し細かいですが、その他有価証券については、株価があるものもあれば、自社で合理的な評価額を算定するものもあります。自社で評価額を算定するような銘柄である場合には、被取得企業が採用した時価算定方法とは別の手法で取得企業が時価評価を行った場合には、異なる時価が算出されることも考えられます。
また、被取得企業が企業結合日前に認識していなかったもの(顧客リスト等)が新たに計上されることもあります。
つまり、取得とされる企業結合においては、被取得企業から受入れる資産及び負債について、取得企業では企業結合日時点で時価評価し計上していきますが、被取得企業がこれまでどのように会計処理を行ってきたのかはあまり意味をなしません。
・また、その他有価証券評価差額金以外にも、例えば、評価・換算差額等には繰延ヘッジ損益もありますが、被取得企業においてヘッジ会計が適用されており、繰延ヘッジ損益が計上されていても、取得企業はそれらを引き継ぎません。これは、ヘッジ会計を適用しているか否かについては被取得企業側での会計処理の話なので、取得企業側では単に当該取引に係るデリバティブ取引等を企業結合日時点の時価で資産又は負債として計上するだけです。
・一方、親会社が子会社を吸収合併する場合のように共通支配下の取引等では、親会社が子会社から受け入れる資産及び負債は,合併期日の前日に付された「適正な帳簿価額」により計上することとされています。
「適正な帳簿価額」には、時価をもって貸借対照表価額としている場合の当該価額及び対応する評価・換算差額等の各内訳科目(その他有価証券評価差額金等)の額が含まれると解されていることから、その他有価証券とそれに対応するその他有価証券評価差額金(ただし、親会社が作成する連結財務諸表において投資と資本の消去の対象とされたものを除く)も引き継ぎます。
共通支配下の取引については、単なる企業集団内における資産及び負債の移転であると考えられるためで、資産及び負債を受け入れた親会社側で、これまで子会社が行ってきた帳簿上の処理を引き継いでいるとイメージして頂けたらと思います。
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